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Komplete Kontrol M32について(レビュー)

2019年3月8日 by Nakaoh Morohoshi コメントを書く

Komplete Kontrol M32が届き、昨日より触っていました。Komplete Kontrol自体は評判もよく、NKSが便利との声が聞かれますが、AシリーズよりNative Instruments社の自社開発キーボードを搭載しているため、どうなんだろうと気になっていました。

AシリーズとMシリーズの操作系統はほぼ同様で、表示画面も同じような感じです。まず、この点に触れたいと思います。

ハードウェア側の画面は見づらい

いまだにA61を買うか、無理をおしてS61にするか悩んでおりますが、とりあえずの間に合わせとベッドサイド用にM32を購入しました。Aシリーズとの違いはキーボードがフルサイズかミニサイズか、ピッチベンドとモジュレーションがホイールかタッチスライダーかというところが大きく、またMシリーズの操作子はAシリーズに比べ若干小さめになっているようです。

ボタンやノブは小さいからといって特に苦になることはありません。クリック感もよく、ノブの精度も良いです。タッチスライダーは確かにホイールに劣る部分が多いですが、ピッチやモジュレーションCCの値の中間値をすっ飛ばして入力できるメリットもあります。サイズ的には仕方がない部分と私は割り切れました。そんなに使わない身でもありますし。

ハードでいちばん困るのは画面です。25ミリ×7ミリ程度の表示部に2行の文字が表示されます。私はさほど目が悪くないことと、くっきりした表示ではあるため読むには困りませんが、演奏中に体が動いているとちょっと視認に時間がかかるかも知れません。それよりも幅が狭いためにタッチセンスのノブを触ってパラメーター名が表示されても短縮されてしまっていて、よく使われる短縮表示以外は何が書かれているのか想像力を必要とするのが問題です。

幸いMaschineにしろKomplete Kontrolにしろ、スタンドアローンの製品ではありませんので、PCの画面が見える位置にあれば視認は困難ではありません。Komplete Kontrol Sシリーズの画面に表示されるようなことはKomplete Kontrolソフトウェア上にも表示されますから、A/MシリーズではPCの画面を見ながら操作するのがスタンダードなのでしょう。

ただ、表示小さめの4Kモニター、13インチクラスラップトップの画面だと、ちょっと慣れるまではパラメータを読むのにモニターに顔を近づけたくなります。これはもちろんOS側の拡大スケール表示で解決できるでしょうが普段使いの利便性のためにも、Komplete Kontrolソフトウェア側にスケールの拡大縮小機能があればいいなあと思います。

決定的な差になるかどうかは、Sシリーズが画面とノブが近いために視点移動少なく操作できる点をどう評価するかでしょうか。

固めのしっかりした鍵盤

キーボード部分はミニ鍵盤なりとは注釈しますが結構弾きやすいです。ピアノ経験者のような方が同じように弾けるとは思いませんが、旋律を片手でぽろぽろ弾くくらいなら申し分ありません。YAMAHAのRefaceのミニ鍵盤の方が弾きやすいとは思いますし、もう少しサイズが大きくなっても良いのならKORGのminilogueやARP Odysseyのスリム鍵盤の方がいいタッチだと思います。しかしこのクラスの製品にしては大変精度の良い製品でがっちりもしており、鍵盤も堅牢性の高さを感じさせる作りです。

世に出回るおおよその鍵盤より力はいると思います。もちろん、楽器の鍵盤における想像の範疇程度のものだと思いますが。長らくIK MultimediaのiRig KEYSを使っておりますが、体感では1.5倍ほどの重量を鍵盤にかける感があり、iRig KEYSより押し込みはじめから底を打つまで一定の力で押せる気がします。また、M32の方が鍵盤の押し込み幅が深いようにも感じます。

そしてiRig KEYSは37鍵盤ですが、32鍵ずつで見てみると、Komplete Kontrol M32の方が鍵盤の幅で3センチ弱広い(iRig KEYS : 37センチ、M32 : 39.7センチ)です。目視すると鍵盤ひとつ分でかなり幅の違いを感じ、これは鍵盤の固さと相まって弾きやすさ、ことミスタッチの減少には結構寄与しているように思います。もちろん幅が広いわけですから省スペース性には足かせとなるわけですが、iRig KEYS : 50.2センチ、M32 : 47.5センチと、鍵盤を減らした分、長辺の長さ的には充分モバイル用途に使えます。なお、白鍵の長さはM32のミニ鍵盤の方が約1センチ長く、操作子もあるため奥行きは結構違います。

ミニキーボードが欲しいなら、買い

総合的に良くできた製品だと思いますが、最後に付記したいのはNKSの便利さです。私のようなものぐさにはピッタリのマッピング済みで、メーカー側がコントロールしやすいように8個のノブにページごとアサインしてくれています。手元にあるKomplete Kontrol M32では両手弾きは無理ですが、ことシンセの音色を変えながら単音を弾くにはこのコンパクトさで最高の楽しみを教えてくれます。

また、私はかなり変質者的なシンセ遍歴をしてしまいましたが、いままで聞いていないプリセットを聞く&すぐノブで音を変化させられることで、使っていなかったシンセを引っ張り出していくつもの発見というか出会いがありました。もっと早くKomplete Kontrolシリーズを手にしていたら、こんなにシンセサイザー音源を買わなかっただろうなあと思います(DTMerとしては正しいかもですがw)。

散々書かれている通り、ハイ・コストパフォーマンスな付属ソフトもこのハードウェアあってこそ、最高に楽しめると思いますので、Kompleteの無償版なんて使ってこなかったという方にもぜひオススメしたいです。きっと出会いがあり、DTMの初心者さんに至ってはしばらくKomplete Kontrol M32とその付属ソフトだけで満足しちゃえるポテンシャルがあると思います。

マーケターでもないですし、特段商売に関わっていきたくもないのですが、いち個人DTMerとしてミニ鍵盤が欲しい方と、DTMをはじめたいけれど無償ではなくちょっと投資しようかな、という初心者さんのファースト・チョイスに推したいと思います。

(後日、写真をアップします)

DTMのお勉強をはじめるにあたって。

2019年1月28日 by Nakaoh Morohoshi コメントを書く

DTMをはじめようとなさる方なら、音楽に興味があって、ということですよね?

私の音楽は宇宙戦艦ヤマトにはじまり、ドラクエで定着したわけですが、私と同じように音楽にまつわる楽しいことがあった方も多かろうと思います。

その気持ち、忘れないでください! DTMだってちゃんとやろうとすれば大変なこともありますし、結構面倒なこともあります。でも、音楽自体が楽しいままならきっと乗り越えたり、しばらく休んで戻ってこられます。

今回はお勉強のお話ですが、勉強が嫌いな方も多いと思います。中国語としては勉強とはつらいことを強いる意味らしいですが、勉強だって楽しいことはあったと思います。運動好きな方は体育のドッヂボールは楽しかったでしょうし、私ははじめてPCを与えられたとき、自ら進んでPC関連の本を読みました……べつにめずらしくもありませんよね? 自分の好きなことがどんなものにカテゴライズされるかで勉強に見られたり遊びに見られるだけであって、どれも知識を得たり考えたり訓練したりしているわけですから。

いわゆる勉強も、好きなことならただ遊んでいるようなもの。そういう認識にしてくれなかった先生や親が悪いと言うことは少なからずあると思います。出来ないからダメ、下手だからダメと言われるばかりではイヤになっちゃいますよね。

やってみようとご自分で思った今、音楽の世界・DTMの世界であなたの意思をくじくのは下手くそという批評であったり、あるいはすごい人がいて自分なんか……と思ってしまうことかも知れません。

でも、あなたが作らなかったらあなたの作品と同じものは生まれません。上手だから意味があって、下手だから意味がないというわけではないし、創作の世界は通常の世界よりそういうものに寛容です。

ネット小説を見ると、市販の小説のようなクオリティを確保できているものは大変少ないです。どうして書いているのでしょう。書くのが楽しい? それもあるでしょうし、いろいろな人がいてクオリティへの寛容度も違います。文章を読み慣れていなくてもストーリーに共感したために応援してくれる読者もいるでしょう。そういうのが嬉しいのかも知れません。そもそも物語というものはそれぞれの人生に備わっていますから想像力が働けば書けるものも多く、お笑い芸人だけが冗談を言えるわけでもないように他人を楽しませることは専門職でなくとも出来ます。

音楽も同じです。きっとメロディなんてだれでも思い浮かびます。でも、同じメロディが浮かぶわけではありません。その人によってさまざまで、そのメロディを聴く人もさまざまです。メロディを思いついてから曲に出来る人も少ないわけで、下手くそでも勉強不足でも、その時にしか書けない、その人にしか書けないものがたくさんあり、少数でもそれに共感してくれる人はきっといます。

その上、商業の話ならうまいから評価されるわけでもありません。マーケティングが実を結ぶこともあるでしょうし、誰かがすごく発信してくれたり。ビートルズ、たいへん流行りましたけれど、私と一緒に音楽やっている人はビートルズの音楽はめちゃくちゃだと言っています。めちゃくちゃいいのではなく、音楽としての品質を指しています。でも、好きな人がいて、勇気づけられた人がいて、国境を飛び越えていまでは学問の研究対象にすらなっているのです。

ですから、ぜひ、制作して公開してください! 新たな作品をどこかで待っている人がいます!

それでも批判等に負けそうな時は……しばらくダラダラしましょうね。音楽が好きという気持ちがなくならなければ、また楽器を触りたくなるでしょうから。楽器はもちろんPCも含みますよ。

挫折しないDTMお勉強のコツ

さて、前置きが長くなりましたが、主題です。なにをするかなんて巷にあふれていますし、そもそも目指す音楽によってやることもこと優先順位は変わるでしょう。ここでは勉強嫌いに既になってしまっている方を主な対象として書きますね。

・本だけ読もうとしない
勉強って教科書や辞書にあたるイメージになっちゃってるかも知れませんが、少なくとも音楽は音を出してその音をイメージできるようになるのが重要です。ピアノのようなものでなくとも、キーボードやギターなんかは持っている方も多そうですね。DTMなのですからDAWを起動して音源を読み込んでMIDI鍵盤を弾いてもいいでしょう。本をどんどん読まなくていいですから、左手と右手の指一本で対旋律を感じたり、片手でコードを押さえて和声のイメージを覚えたり。最初に楽典の本を買ったら長○度とか減○度とか出てくるかも知れませんし、長調短調の話もあるでしょう。まともに弾けなくてもいいですから、ゆっくり音を出してみて(DAWがあるんですから、打ち込んで鳴らしても!)音を感じてください。

・同じジャンルの本をいろいろあたってみる
音楽には学問として研究されていることがいろいろありますから、突っ込んでいくとそれこそ学者さんになってきます。究めていこうとしている方がお書きになった大変難しい本が出回っていますし、おすすめされることも多いです。ひとつの本を読んで分からなくても、似たような本もあったりします。日本語自体があなたに合っていない場合もあり、違う本で容易に分かったり、他のを読んでから戻ってみたら理解できたなんて良くあることです。本をたくさん買うのも出費ですが、DTMerには同じジャンルの本を買うなんて通常営業です。

・勉強だけしない
PCでDAWに向かったり楽器を触ったりするのは楽しいですよね。楽器の音が出るってペットも興味を持って夢中になるくらいです。また、作品が完成する喜びは何ものにも代え難いです。勉強して究めるまで音楽を作らないなんてもったいない。読みつつ鳴らしつつ作ってください。音符を書いているときにも気づきがあるはずです。

どちらにせよ、音楽を作りたいという願望が生まれるには、あなたの中に音楽的ななにかが定着している状態だと思います。あなたのメロディでしょうか? あなたの和声感でしょうか? あるいはリズム感でしょうか? なにか分からなくても大丈夫です。既にあなたの中にあるものを言語として語れるまでに呼び起こすこと、創作としての音楽はきっとそれに尽きます。

ぜひ、読んで、鳴らして、感じて、感覚を呼び覚ましてください。

私DTMer、楽器店、どこ使う?

2019年1月19日 by Nakaoh Morohoshi コメントを書く

DTM用の機材は極端なことを言えばソフトウェアや電気製品ですから家電量販店に行けば(種類は少ないでしょうが)置いてある場合もあり、なくとも注文できるでしょう。店舗の買い物ポイントも使い道が広いです。

ただ、やっぱり楽器を専門に扱っているお店の方がそもそも対象製品をセールすることも多いですし、置いてある商品も試しやすく、何より知識を持った店員さんがいます。私としては信頼できる店員さんがいるならぜひそのお店で、と言いたいのですが、まあ、限られた資金ですから価格も重要ですよね。

また、インターネット・ショッピングはことDTMerにとっては重要で、英語の読み書きができる、あるいはサポートは必要としていないと言うのならば、海外のセール品を購入することができます。輸送費も意外とかからなかったり、そもそも現在はかなり大きな容量のソフトでもインターネット回線でDLできますので、パソコンを使った活動にピッタリです。

今回は、メーカー直販や代理店サイト以外のDTM関連商品取り扱いネットショップの簡単な情報を記載します。

国内販売店

サウンドハウス

昔は日本一安いという文句を欲しいままにしていましたが、いまはそれほどではないかも知れません。ただ、最安値であることは確かにあって、品揃えも豊富です。10年以上前にクレジットカード情報が流出して(中国からの攻撃であったとサイト画面と一緒にテレビに映ってました)数年間カード利用ができなくなりましたが、いまはセキュリティを強化して利用できるようになっています。このお店を利用する醍醐味は海外からの直輸入品を買うことでしょうか。代理店サポートがなくなるものの、さまざまなハード製品が安く買えるのは魅力的です。国内正規品と直輸入品の価格差はものによってまちまちですので、ぜひ、いろいろ比べてみてください。

Rock oN Line eStore

WavesやFXpansion等の代理店であるMedia Integration社は渋谷と梅田でRock oN Companyという楽器店を開いており、DTM関連機材のお店としては専門性が高く、知識豊富な店員さんの多さ、イベント・セミナーの頻度、並ぶ商品の量から、東京や大阪に出たときにはぜひとも寄りたい店舗になっています。セールも多く、実店舗に行けるなら行った方がいいお店ではあるのですが、ネットショップでもセール品が買えることも多くあり、また最安値であることもしばしばです。eStoreではポイントが付きますが、Amazonにも出店していてポイントは付かないもののそちらの方が大幅に安いこともしばしばあります。

ミュージックランドKEY

最安値ということがそう多いわけではないのですが、ときどきびっくりするような価格が付いていたりします。

イケベ楽器店

日本最大級を謳うだけあって新品・中古とも取り扱い楽器が非常に多いです。ソフト中心のDTMでもハードは必要になってきますが、中古品を探すのにはトラブルが少なくていいのではないでしょうか。

イシバシ楽器・島村楽器

こちらも多くの新品・中古品を扱っています。特筆すべきは実店舗の数が多く訪れやすいこと、そしてショッピングセンターなどに入っている場合が多々あることです。例えばパルコに店舗があることは多いですが、パルコにはパルコカード決済で10%offの日が毎年数回ありますので、セールを行わないようなブランドの商品を購入する場合、お得になります。島村楽器では以前、Vocaloid Editorが最安値だったことがありました。

Music House FRIENDS

価格.comを見ると全体的にかなり安い値をつけるお店のようです。こちらのお店はサウンドハウスさんより数は少ないものの、手頃なDTMデスクを取り扱っていて買いやすいです。

海外販売店

Audio Deluxe
JRRshop
Time+Space
Plugin Boutique
everyPlugin

海外の実店舗を直接訪れるのは相当のツワモノでしょうが、インターネットを利用すれば海外のネットショップで簡単に買い物できます。Paypalを利用する方は多そうで、私も面倒の回避から利用していますが、上記のよく話題になるところは大丈夫でしょうし、ここに記載していないところでもあとはソフトハウスの直売が大半でしょうから、クレジットカードを登録するのが面倒でなければそちらの方が有利な場合が多そうです。有利とは単純に価格で、円で表示されることはまれですし、円表示になっていても相場に大分上乗せされています。Paypalも同様で、円のレートがいつのものか不明で、割高な相場での支払いとなります。ドル・ユーロ・ポンドを切り替えられるお店もありますので、為替相場を確認しつつお買い物なさるのが良いと思います。

ゆにばすさんのブログサイトSynthSonicのこちらの記事に詳しいです。

なお、同じくゆにばすさんが管理なさっているComputer Music JapanやオンラインDTMレッスンで有名なSleepfreaksさんのMEDIA SITEでは日本語で世界中のセール情報が確認できますので、ツイッターアカウントをフォローしておくと取りこぼしを減らせるのではと思います。

無料シンセサイザー「OB-Xd」

2019年1月18日 by Nakaoh Morohoshi コメントを書く

DTMを趣味としている方には(無論プロの方も)とても楽しく、あるいは悩ましいプラグイン導入の検討。もちろん何もかも入れられればそれに越したことはないかも知れませんが、導入にはさまざまなコストがかかり(プラグイン自体の価格、インストールするPCの性能、もしかしたらどんなプラグインか記憶しておく脳も!?)、無限に導入するわけにはいきません。

「音がいい」と聞くと私などもついつい手を出したくなるわけですが、そもそもプラグインの音の良さとはどういうものでしょう? 実際の楽器や機材が存在するプラグインであれば音が鳴っているときにその楽器としてのリアリティがあるものが良いのでしょうけれど、そもそもHi-Fiな音というものが厳密に求められているかというと、そうでもありません。DTMブログを読んでくださる層に向けての記事ですので、「何をあたりまえな」と思われる方も多かろうことを想像しておりますが、昨今のアナログシンセやアウトボードの復古を見るに、やはり音に揺らぎがあったりときどきに違いがあったり、または通したときに音を脚色してくれるということに美点を見出す方がたくさんいらっしゃるのだと思います。そういった不確実な要素の傾向はアナログ機材には機材ごとに存在しているでしょうし、アナログ機材をシミュレートしたりアナログライクな挙動を目指したソフトウェアにも完成度として、あるいはオリジナリティーとして違いが存在するようです。

私は最初にオーケストラ曲を書きたいと思ってDTMをはじめましたので、まずオーケストラ音源に手を出しましたが、ソフトウェアの操作系のプログラムやデザインのことをまったく考慮できませんでした。ですから、その時の基準は単純に「楽器の音がそれっぽいか」だったわけで、そのため容量の大きいサンプリング音源にたどり着くのは当然のことだったと思います。その音源は現在も愛用しておりますが、最近は実際に鳴らしてみると自然にそれっぽく演奏される物理モデリングの音源にも興味が出ております。ピアノ音源の巨頭2製品というのは語弊があるかも知れませんが、Media Integrationが代理店をしている企業のピアノ音源が2つありまして、片方がIvory、もう一方がPianoteqと、サンプリングVS物理モデリングの構図ができあがっています。まだまだ音として聞くとプログラムとして構成されたものより実際に楽器を録音したもの方がリアルと感じる方が多いようですが、演奏を楽しむ方の楽器としては物理モデリング音源の方が手についてくる、自然な弾き心地を感じさせるというコメントを多く見聞きします。

そう考えると、「音がいい」と言っても少なくとも音源ソフトの音の良さは趣味嗜好の領域なのだと思います。

無料でも市販品と戦える「シンセ音源」

さて、「プログラムで構成される」という書き方をしましたが、物理モデリング音源はプログラムを組み上げて作られたソフトですから、究極的に言えばプログラマーだけいれば作れます。回路のモデリングもそうで、回路の性質をプログラムできればソフトとして完成させられます。そうではなくサンプリングが必要になるとすると、楽器の演奏家(あるいは実際の楽器を弾けるロボットを作る手もあるかも知れません。馬鹿げているようで、VSL社のピアノ音源は機械が弾いているという記事がありました)が必要で、単純な楽器なら強弱数種の音を録音してサンプラー用にプログラムすればいいのでしょうが、音高が存在し強弱が存在し奏法も数がありとなってくると、プログラムの前に膨大な量の録音が必要となります。録音するにはたいがいの場合、エンジニアも必要になるでしょう。つまり「お金がかかる」のです。

ここで無料プラグインの話となってくるわけですが、お金をかけて無償で提供するお人好しはそうはいないわけで、たいがいの無料ソフトは単純なプログラムのソフトです(それでも何日間もプログラムして広告収入程度で配布して下さる方は大変良心的なのですが)。そしてプログラムも多くの記述が必要ない方が時間がかからないわけで、やはり空間に物質を定義して配置していくようなことよりも、回路の中を計算させる方が楽なようです。そういうわけで、無償配布されている音源プラグインの多くはいわゆるシンセサイザー、電気回路やプログラムとして音を作り出すもののソフトウェアとなっています。

もちろん有償プラグインはお金を取るわけですから、まずサポートがあり、そしてバグFixも手早く行ってくれます。そこはお金を取らないわけですから文句は言えませんよね。あと、単純なシンセとしての機能でなく、例えばシーケンサーだとかエフェクターだとか、機能を拡張するような部分は弱いでしょう。シンセサイザーとエフェクターの相性は良いとおっしゃる方も多くそこは残念ではありますが、いまはDAWを使うこと前提の作曲環境ですから、シンセのトラックに自前で読み込んであげてください。ソフトウェアのエフェクターはプログラムすることで作成できますから、フリーのものもいっぱい見つかると思います。

おすすめ無償音源「OB-Xd」

というわけで、無償プラグインの紹介は私の趣味嗜好を大いに反映したシンセサイザー音源になるのですが、私が好むばかりでなく多くの方の支持があるもので、2014年のベスト・フリー・プラグインの上位に多くのサイトが取り上げたOB-Xdというソフトです。現在はdiscoDSP社の取り扱いとなっていますが、もともとは個人開発だったようです。もちろん現在も無料です。DiscoDSP社はNord Lead 2をモデルにしたソフト音源で知られていますね。

アナログシンセサイザーの名器にご興味おありの方は「OB」にピンとくるかと思いますが、Oberheimの製品、ポリフォニック・シンセサイザーOB-Xを元にしているソフトです。

OB-Xdのダウンロードはこちら(discoDSP社のページに飛びます)

結局使い勝手とコストからアナログポリシンセの導入を諦めた私なのですが、それには昨今のアナログシンセのシミュレーション精度の高さを感じ、ハードを諦めてシミュレーションソフトで納得できた、という面があります。アナログシンセサイザーとしての質感に驚かされたソフトウェアはu-he社のDivaというソフトなのですが、わたしはよりシンプルにアナログシンセを追求した同社のReproを購入しております。どちらも通常2万円程度の一般的なソフトシンセの価格帯ですので音からしておすすめできますが、私のような他に何もできないような人間ならともかく、生活をして家族や友人がいて外に出る方々や学生がそう簡単にポンと買えるものではないことも分かります。特に音楽をやっていてもシンセをメインに扱おうと思っていないならば。

しかしながら、このOB-Xdは無償です。初出からしばらく経っていますので英語が読めればTips等も転がっているかも知れません。日本では国内の方が作ったシンセであることもありSynth-1という無償ソフトが話題になることが多いです(もちろんこちらも良いシンセです。いじれるところも多いですし、ユーザーの数が多いですからプリセットもいっぱいDLできます)。私が今回こちらを推すのは「アナログシンセ好き」としてでもあり、シンセサイザー初級者としてでもあります。そう、つまみが多すぎず少なすぎず、機能もシンプルなシンセとしてのものに限られており、アナログ感のある音(ついでにプリセットもかなり豊富)だからです。

以下は楽器マニアのための情報サイト「ICON」さんからのOB-Xd概要の引用です。

● 2基のオシレーターとノイズを独立してミックスできる“MIX”セクション

● 半音単位のチューニングに固定できる“STEP”スイッチ

● 高次倍音を変化させることにより音色を明るくできる“BRIGHT”ノブ

● 2基のオシレーターのピッチをランダムにデチューンさせることにより、アナログ・シンセサイザー特有の厚みのあるサウンドを生み出すことができる“SPREAD”ノブ

● ローパス/ノッチ/バンドパス/ハイパスを切り替えできるマルチモード仕様のフィルター(実機はローパス・フィルター)。フィルター・タイプの切り替えは、“MULTI”ノブと“BP”スイッチで行う(“MULTI”ノブを左に回すとローパス、12時方向でノッチ、右に回すとハイパス、“BP”スイッチを有効にするとバンドパス)

● 24dB/octaveのローパス・フィルターに切り替えることができる“24dBスイッチ”(通常は12dB/octave)。このスイッチが有効のとき、“MULTI”ノブでは6dB/octaveから24dB/octaveにフィルター・スロープを連続可変することが可能

● 高周波数帯域で、より滑らかなかかり具合のフィルターを実現する“HQ”スイッチ(註:CPUパワーをより多く消費します)

● ベロシティによってEGの適用量を変化させることができる“FILTER ENV VEL”ノブと“AMP ENV VEL”ノブ

● 後に弾かれたノートを優先して発音させる“VAM”スイッチ(デフォルトでは実機同様、低いノートを優先して発音させる)

● 1音単位で発音するボイス数を設定できる“VOICES”プルダウン・メニュー

● “VOICES”プルダウン・メニューで“1”を設定時、すべてのボイスをユニゾンで発音させることができる“UNISON”スイッチ

● 4種類の発音モードを選択できる“LEGATO”プルダウン・メニュー

● 各パラメーターに任意のMIDIコントロールチェンジをアサインできる“LEARN”および“CLEAR”スイッチ

● アナログ回路ならではの振る舞いを再現することができる“VOICE VARIATION”セクション

● ボイスごとにバンニングを設定できる“VOICE PAN”セクション

私がよく起動するシンセは先述のRepro-5なのですが、OB-Xdはシンセの機能としては同じポリ数だったり豊富なプリセットもあり、負けていません。商用としてエフェクトが組み込まれているのがReproですが、そこはフリーのエフェクトやDAW付属のエフェクトを使っていけるのではと思っています。ギターのエフェクターなどをお持ちなら、一度外に音を出してから取り込んでも面白いかも知れませんね。

実は私、これまでの作品にシンセは利用してきましたが、基本的にプリセット+αな使い方しかしておりませんでした。そのうえ初めての楽器としてアナログシンセを手にし、目を輝かせていた先人たちを冒涜するかのように、シンセ音はすべて他の楽器と混ぜております。

機械好きでもあり音楽好きでもある私、ここはシンセ初心者を脱する目標を立ててもいいのでは、と思います。そこで「はじめてのシンセ部」企画をしようかと考えております。いつの世も初心者は存在し、お金のない中で工面する学生もいます。私もDAWを手に入れたばかりのことを思い出し、今のそういう方々やこれからの方々と一緒に歩んでいけたらと思います。

discoDSP「OB-Xd」はWin/Mac対応、64bitネイティブです。

ダウンロードはこちら(以前記事にしたPlugin BoutiqueからもDLできます!)

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Nakaoh Morohoshi

Nakaoh Morohoshi

1986年、静岡市生まれの日曜作家・作曲家。主に文芸に関してとDTMについてつぶやいてます。

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