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無料シンセサイザー「OB-Xd」

2019年1月18日 by Nakaoh Morohoshi コメントを書く

DTMを趣味としている方には(無論プロの方も)とても楽しく、あるいは悩ましいプラグイン導入の検討。もちろん何もかも入れられればそれに越したことはないかも知れませんが、導入にはさまざまなコストがかかり(プラグイン自体の価格、インストールするPCの性能、もしかしたらどんなプラグインか記憶しておく脳も!?)、無限に導入するわけにはいきません。

「音がいい」と聞くと私などもついつい手を出したくなるわけですが、そもそもプラグインの音の良さとはどういうものでしょう? 実際の楽器や機材が存在するプラグインであれば音が鳴っているときにその楽器としてのリアリティがあるものが良いのでしょうけれど、そもそもHi-Fiな音というものが厳密に求められているかというと、そうでもありません。DTMブログを読んでくださる層に向けての記事ですので、「何をあたりまえな」と思われる方も多かろうことを想像しておりますが、昨今のアナログシンセやアウトボードの復古を見るに、やはり音に揺らぎがあったりときどきに違いがあったり、または通したときに音を脚色してくれるということに美点を見出す方がたくさんいらっしゃるのだと思います。そういった不確実な要素の傾向はアナログ機材には機材ごとに存在しているでしょうし、アナログ機材をシミュレートしたりアナログライクな挙動を目指したソフトウェアにも完成度として、あるいはオリジナリティーとして違いが存在するようです。

私は最初にオーケストラ曲を書きたいと思ってDTMをはじめましたので、まずオーケストラ音源に手を出しましたが、ソフトウェアの操作系のプログラムやデザインのことをまったく考慮できませんでした。ですから、その時の基準は単純に「楽器の音がそれっぽいか」だったわけで、そのため容量の大きいサンプリング音源にたどり着くのは当然のことだったと思います。その音源は現在も愛用しておりますが、最近は実際に鳴らしてみると自然にそれっぽく演奏される物理モデリングの音源にも興味が出ております。ピアノ音源の巨頭2製品というのは語弊があるかも知れませんが、Media Integrationが代理店をしている企業のピアノ音源が2つありまして、片方がIvory、もう一方がPianoteqと、サンプリングVS物理モデリングの構図ができあがっています。まだまだ音として聞くとプログラムとして構成されたものより実際に楽器を録音したもの方がリアルと感じる方が多いようですが、演奏を楽しむ方の楽器としては物理モデリング音源の方が手についてくる、自然な弾き心地を感じさせるというコメントを多く見聞きします。

そう考えると、「音がいい」と言っても少なくとも音源ソフトの音の良さは趣味嗜好の領域なのだと思います。

無料でも市販品と戦える「シンセ音源」

さて、「プログラムで構成される」という書き方をしましたが、物理モデリング音源はプログラムを組み上げて作られたソフトですから、究極的に言えばプログラマーだけいれば作れます。回路のモデリングもそうで、回路の性質をプログラムできればソフトとして完成させられます。そうではなくサンプリングが必要になるとすると、楽器の演奏家(あるいは実際の楽器を弾けるロボットを作る手もあるかも知れません。馬鹿げているようで、VSL社のピアノ音源は機械が弾いているという記事がありました)が必要で、単純な楽器なら強弱数種の音を録音してサンプラー用にプログラムすればいいのでしょうが、音高が存在し強弱が存在し奏法も数がありとなってくると、プログラムの前に膨大な量の録音が必要となります。録音するにはたいがいの場合、エンジニアも必要になるでしょう。つまり「お金がかかる」のです。

ここで無料プラグインの話となってくるわけですが、お金をかけて無償で提供するお人好しはそうはいないわけで、たいがいの無料ソフトは単純なプログラムのソフトです(それでも何日間もプログラムして広告収入程度で配布して下さる方は大変良心的なのですが)。そしてプログラムも多くの記述が必要ない方が時間がかからないわけで、やはり空間に物質を定義して配置していくようなことよりも、回路の中を計算させる方が楽なようです。そういうわけで、無償配布されている音源プラグインの多くはいわゆるシンセサイザー、電気回路やプログラムとして音を作り出すもののソフトウェアとなっています。

もちろん有償プラグインはお金を取るわけですから、まずサポートがあり、そしてバグFixも手早く行ってくれます。そこはお金を取らないわけですから文句は言えませんよね。あと、単純なシンセとしての機能でなく、例えばシーケンサーだとかエフェクターだとか、機能を拡張するような部分は弱いでしょう。シンセサイザーとエフェクターの相性は良いとおっしゃる方も多くそこは残念ではありますが、いまはDAWを使うこと前提の作曲環境ですから、シンセのトラックに自前で読み込んであげてください。ソフトウェアのエフェクターはプログラムすることで作成できますから、フリーのものもいっぱい見つかると思います。

おすすめ無償音源「OB-Xd」

というわけで、無償プラグインの紹介は私の趣味嗜好を大いに反映したシンセサイザー音源になるのですが、私が好むばかりでなく多くの方の支持があるもので、2014年のベスト・フリー・プラグインの上位に多くのサイトが取り上げたOB-Xdというソフトです。現在はdiscoDSP社の取り扱いとなっていますが、もともとは個人開発だったようです。もちろん現在も無料です。DiscoDSP社はNord Lead 2をモデルにしたソフト音源で知られていますね。

アナログシンセサイザーの名器にご興味おありの方は「OB」にピンとくるかと思いますが、Oberheimの製品、ポリフォニック・シンセサイザーOB-Xを元にしているソフトです。

OB-Xdのダウンロードはこちら(discoDSP社のページに飛びます)

結局使い勝手とコストからアナログポリシンセの導入を諦めた私なのですが、それには昨今のアナログシンセのシミュレーション精度の高さを感じ、ハードを諦めてシミュレーションソフトで納得できた、という面があります。アナログシンセサイザーとしての質感に驚かされたソフトウェアはu-he社のDivaというソフトなのですが、わたしはよりシンプルにアナログシンセを追求した同社のReproを購入しております。どちらも通常2万円程度の一般的なソフトシンセの価格帯ですので音からしておすすめできますが、私のような他に何もできないような人間ならともかく、生活をして家族や友人がいて外に出る方々や学生がそう簡単にポンと買えるものではないことも分かります。特に音楽をやっていてもシンセをメインに扱おうと思っていないならば。

しかしながら、このOB-Xdは無償です。初出からしばらく経っていますので英語が読めればTips等も転がっているかも知れません。日本では国内の方が作ったシンセであることもありSynth-1という無償ソフトが話題になることが多いです(もちろんこちらも良いシンセです。いじれるところも多いですし、ユーザーの数が多いですからプリセットもいっぱいDLできます)。私が今回こちらを推すのは「アナログシンセ好き」としてでもあり、シンセサイザー初級者としてでもあります。そう、つまみが多すぎず少なすぎず、機能もシンプルなシンセとしてのものに限られており、アナログ感のある音(ついでにプリセットもかなり豊富)だからです。

以下は楽器マニアのための情報サイト「ICON」さんからのOB-Xd概要の引用です。

● 2基のオシレーターとノイズを独立してミックスできる“MIX”セクション

● 半音単位のチューニングに固定できる“STEP”スイッチ

● 高次倍音を変化させることにより音色を明るくできる“BRIGHT”ノブ

● 2基のオシレーターのピッチをランダムにデチューンさせることにより、アナログ・シンセサイザー特有の厚みのあるサウンドを生み出すことができる“SPREAD”ノブ

● ローパス/ノッチ/バンドパス/ハイパスを切り替えできるマルチモード仕様のフィルター(実機はローパス・フィルター)。フィルター・タイプの切り替えは、“MULTI”ノブと“BP”スイッチで行う(“MULTI”ノブを左に回すとローパス、12時方向でノッチ、右に回すとハイパス、“BP”スイッチを有効にするとバンドパス)

● 24dB/octaveのローパス・フィルターに切り替えることができる“24dBスイッチ”(通常は12dB/octave)。このスイッチが有効のとき、“MULTI”ノブでは6dB/octaveから24dB/octaveにフィルター・スロープを連続可変することが可能

● 高周波数帯域で、より滑らかなかかり具合のフィルターを実現する“HQ”スイッチ(註:CPUパワーをより多く消費します)

● ベロシティによってEGの適用量を変化させることができる“FILTER ENV VEL”ノブと“AMP ENV VEL”ノブ

● 後に弾かれたノートを優先して発音させる“VAM”スイッチ(デフォルトでは実機同様、低いノートを優先して発音させる)

● 1音単位で発音するボイス数を設定できる“VOICES”プルダウン・メニュー

● “VOICES”プルダウン・メニューで“1”を設定時、すべてのボイスをユニゾンで発音させることができる“UNISON”スイッチ

● 4種類の発音モードを選択できる“LEGATO”プルダウン・メニュー

● 各パラメーターに任意のMIDIコントロールチェンジをアサインできる“LEARN”および“CLEAR”スイッチ

● アナログ回路ならではの振る舞いを再現することができる“VOICE VARIATION”セクション

● ボイスごとにバンニングを設定できる“VOICE PAN”セクション

私がよく起動するシンセは先述のRepro-5なのですが、OB-Xdはシンセの機能としては同じポリ数だったり豊富なプリセットもあり、負けていません。商用としてエフェクトが組み込まれているのがReproですが、そこはフリーのエフェクトやDAW付属のエフェクトを使っていけるのではと思っています。ギターのエフェクターなどをお持ちなら、一度外に音を出してから取り込んでも面白いかも知れませんね。

実は私、これまでの作品にシンセは利用してきましたが、基本的にプリセット+αな使い方しかしておりませんでした。そのうえ初めての楽器としてアナログシンセを手にし、目を輝かせていた先人たちを冒涜するかのように、シンセ音はすべて他の楽器と混ぜております。

機械好きでもあり音楽好きでもある私、ここはシンセ初心者を脱する目標を立ててもいいのでは、と思います。そこで「はじめてのシンセ部」企画をしようかと考えております。いつの世も初心者は存在し、お金のない中で工面する学生もいます。私もDAWを手に入れたばかりのことを思い出し、今のそういう方々やこれからの方々と一緒に歩んでいけたらと思います。

discoDSP「OB-Xd」はWin/Mac対応、64bitネイティブです。

ダウンロードはこちら(以前記事にしたPlugin BoutiqueからもDLできます!)

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Nakaoh Morohoshi

Nakaoh Morohoshi

1986年、静岡市生まれの日曜作家・作曲家。主に文芸に関してとDTMについてつぶやいてます。

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